⛰️ 地盤と基礎構造の相互作用:建物全体の耐震性能を決定づけるSSI効果の理解

貴社が所有・管理されている大規模建築物の耐震性能を評価する際、構造体(柱や梁)の強度に目が行きがちですが、建物の**「足元」、すなわち地盤と基礎構造の相互作用こそが、地震時の建物の応答を決定づけます。この地盤と構造物が一体となって応答する現象を「地盤・構造物相互作用($SSI$: Soil-Structure Interaction)効果」と呼びます。SSI効果を正確に理解せずに耐震診断や補強を行うことは、費用対効果を損なうだけでなく、建物の真のリスクを見誤る****原因となります。この記事では、専門コンサルタントとして、SSI効果が建物の揺れに与える影響、地盤と基礎の診断の重要性**、そして建物全体の耐震性能を最大化するための戦略的アプローチを技術的に解説します。 

 

SSI効果が地震時の揺れに与える2つの影響 

地盤と建物は独立して揺れるのではなく、基礎を介して影響を与え合います。SSI効果は、建物の固有周期と減衰性能に変化をもたらします。 

  • 固有周期の長期化(揺れの周期が長くなる 
    • 影響建物が堅固な地盤に建っている場合に比べ、比較的に軟らかい地盤の上に建っている場合**、建物の基礎の周りの地盤も一緒に変形するため、建物全体の揺れの周期が長くなります(剛性の低下)。 
    • リスク: 建物の固有周期が長くなることで、長周期地震動と共振するリスクが高まります。特に超高層ビルや長大な構造物では、遠方の巨大地震による長周期の揺れで想定外の大きな変形が生じる****可能性があります。 
  • 減衰効果の増大(揺れが収まりやすくなる 
    • 影響地震の揺れのエネルギーの一部が、基礎を通じて****地盤へと拡散・吸収されます。これを**「放射減衰」と呼びます。SSI効果を考慮すると、建物の減衰性能が増大し、揺れが収まりやすくなる方向に作用**します。 
    • 重要性: 減衰の増大は揺れの増幅を抑えるため、耐震設計ではSSI効果による減衰を適切に考慮することで、設計を合理的に行うことが可能になります。 

 

SSI効果を見極めるための複合的診断 

建物全体の真の耐震性能を評価するためには、構造体の診断に加え、地盤と基礎の現状を正確に把握する複合的な診断が不可欠です。 

  • 地盤調査と液状化ポテンシャルの評価 
    • 診断: S波速度やN値といった地盤の強度を計測し、地震時に想定される地盤の変形や応答特性を特定します。特に埋立地や軟弱地盤では、液状化の発生ポテンシャルを厳密に評価します。液状化は地盤の支持力を失わせ、建物の沈下や傾斜という致命的な損傷を引き起こし**ます。 
    • 技術的根拠: SSI解析を行うためには、地盤の物理的な特性(剛性や減衰)を正確にモデル化する必要があります。
  • 基礎構造の健全性診断 
    • 診断: 基礎杭の種類、長さ、経年劣化の状態を確認します。旧耐震建物では、基礎の設計が現状の建物の重さや想定地震動に耐えられるかを検証します。基礎杭に損傷がある場合、地震の力が建物に適切に伝達されず、建物の応答が不安定になります。 

貴社の建物が建っている地盤の特性と、SSI効果を考慮した建物の固有周期の概算を知りたい場合、また地盤と基礎を含む複合的な耐震診断の概算費用を知りたい場合は、無料で3分で完了する「耐震ウェブ診断」をご利用**ください。 

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SSIを考慮した建物全体のレジリエンス強化戦略 

SSI効果を踏まえた耐震対策は、建物の上部と地盤・基礎を統合したアプローチで行う必要があります。 

  • 建物上部の剛性調整: 
    • 対策: 軟弱地盤の上に建っている場合、建物の周期が長期化しやすいため、制震ダンパーを導入することで減衰を高め、共振による過大な揺れを抑制します。剛性を調整することで、地盤の特性と建物の応答のバランスを最適化します。 
  • 地盤改良による基礎の安定化: 
    • 対策: 液状化ポテンシャルが高い地盤では、グラウンドアンカーや締固め工法などの地盤改良を行い、地盤の剛性を高めて沈下や傾斜を防ぎます。建物の基礎が安定することで、地震のエネルギーが効率的に構造体に伝達され、構造計算どおりの応答が期待できます。
  • 基礎免震工法の採用: 
    • 対策: 大規模な建物の場合、建物と地盤を構造的に分離する免震工法が最も効果的です。免震装置を基礎と建物の間に設置することで、地盤から伝わる地震の揺れの影響を大幅に低減し、SSI効果による予期せぬ応答の変化を制御**します。 

SSI効果の理解は、建物の耐震性能の真実を知るための鍵です。構造体だけでなく、地盤と基礎を含めた****総合的な評価と対策を行うことで、貴社の建物は地震に対する最高のレジリエンスを獲得**します。 

貴社は、この地盤と構造物の相互作用を踏まえた****統合的な耐震強化戦略を、いつ、実行されますか