耐震診断において、建物の「設計上の強さ」と同じくらい重要なのが、現在の**「健康状態(劣化度)」です。特にコンクリート構造物の命綱である鉄筋の腐食**は、表面にひび割れや錆汁が出るまで気づきにくく、放置するとある日突然、耐震性能を根底から崩壊させます。
最新の診断現場では、建物を壊さずに内部を探る「非破壊検査」が主流となっています。本記事では、見えない鉄筋腐食がなぜ危険なのか、そしてそれをどう見つけ出すのかについて解説します。
「爆裂」は末期症状:鉄筋腐食が耐震性を奪うメカニズム
鉄筋は通常、コンクリートの強いアルカリ性によって錆から守られています。しかし、二酸化炭素の浸透(中性化)や塩害によりアルカリ性が失われると、鉄筋は一気に腐食し始めます。
1. 付着剛性の低下
コンクリートと鉄筋は、お互いがガッチリと噛み合うことで強度を発揮します。腐食によって鉄筋が細くなったり、表面に錆の膜ができたりすると、地震時に鉄筋がコンクリートから「スッポ抜ける」現象が起きます。
2. 有効断面積の減少
鉄筋そのものが細くなることで、地震の引張力に耐えられる限界値が低下します。
3. 体積膨張によるコンクリートの破壊
鉄は錆びると体積が約 $2$ 倍以上に膨らみます。この内側からの圧力によってコンクリートが押し出され、剥離・剥落(爆裂現象)を引き起こします。
表面を壊さずに中を見る「3つの最新非破壊検査」
図面上の計算値ではなく、**「今、そこに残っている強度」**を測るために、以下の技術を駆使します。
- 自然電位法(電気的調査):
コンクリート表面に電極を当て、内部の鉄筋との間に流れる微弱な電流を測定します。鉄筋がどれくらい「錆びやすい状態にあるか」を広範囲に、かつスピーディーにマッピングできます。
- 電磁波レーダー・電磁誘導法:
鉄筋の正確な位置と、コンクリートのかぶり厚さ(表面からの距離)を測定します。かぶり厚さが不足している場所は、将来的な腐食リスクが極めて高いと判定されます。
- 超音波・弾性波法:
コンクリート内部に超音波を飛ばし、その跳ね返り方で内部の空洞や鉄筋との剥離を検知します。
耐震性能への「反映」:劣化低減係数の適用
非破壊検査の結果は、耐震診断の数値(Is値)に直接影響を与えます。
A. 劣化度による「強度の割り引き」
耐震診断基準では、鉄筋腐食や中性化が進んでいる場合、部材の強度に**「劣化低減係数」**を掛け合わせます。
- 例: 計算上の強度が $1.0$ あっても、重度の腐食があれば $0.7$ 程度にまで評価が下げられることがあります。これにより、判定結果が「合格」から「要補強」に転じるケースが多々あります。
B. 寿命予測と補強の優先順位
「今すぐ壊れるか」だけでなく、「あと何年で危険水域に達するか」を予測します。これにより、限られた予算をどの部材に優先投入すべきかの経営判断が可能になります。
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実務担当者がチェックすべき「劣化の境界線」
- 中性化深さの確認:
- コンクリートのアルカリ性を失った層(中性化層)が鉄筋の位置まで到達しているか。到達していれば、腐食は秒読み段階です。
- 打診検査の音:
- テストハンマーで叩いた際の「軽い音(ボコボコという音)」は、内部でコンクリートと鉄筋が剥離している決定的な証拠です。
- 周辺環境の影響:
- 海に近い(塩害)、あるいは交通量が多い(二酸化炭素)場所にある建物は、一般的な耐震診断よりも頻繁な非破壊検査が推奨されます。
診断は「現状維持」の確認ではない
耐震診断は、設計図をなぞるだけの作業ではありません。「コンクリート内部の健康状態」を正しく把握して初めて、震災時にその建物が本当に機能するかを断言できます。
表面の美しさに惑わされず、内部で進行する「沈黙の劣化」を非破壊検査で捉えること。それが、不必要な補強を省き、最小限のメンテナンスで最大限の安全を確保するための、最も賢明なアプローチです。
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