貴社が所有・管理されている大規模建築物、特に旧耐震基準(1981年5月以前)で建てられた工場、倉庫、オフィスビルにおいて、耐震対策の焦点は常に構造体(柱、梁、耐力壁)の**$Is$値に置かれがちです。しかし、専門コンサルタントとして警鐘を鳴らしたいのは、巨大地震発生時に人命被害の主要因となり、事業継続性(BCP)を即座に停止させる「非構造部材」の脅威です。旧耐震建物は、構造体自体の脆弱性に加え、これらの非構造部材の固定基準が現代の基準を満たしていないという二重のリスクを抱えています。この記事では、旧耐震建物に潜む非構造部材の具体的なリスクを技術的に解説し、貴社が取るべき総合的な安全対策**を提示します。
非構造部材が旧耐震建物にもたらす2つの致命的なリスク
非構造部材とは、建物の荷重を支える役割を持たない部材(天井、外壁、間仕切り壁、設備機器、配管など)を指します。旧耐震基準では、構造体の倒壊防止が優先されたため、これらの非構造部材に対する地震時の挙動や固定基準が、現在の新耐震基準や告示に比べて著しく不十分です。
旧耐震建物特有の非構造部材リスク
- 天井・間仕切り壁の崩落による人命被害
- 旧耐震の建物では、天井材や照明器具の吊り下げや固定方法が、大きな地震の揺れ(特に上層階で増幅される加速度)に対する安全性を考慮されていません。大規模な工場やオフィス、倉庫では、吊り天井や間仕切り壁が地震で外れて落下・崩落し、避難経路の閉鎖や従業員の死傷に直結するリスクが極めて高いです。これは、構造体が無事であっても発生する人命被害の最大の要因です。
- 設備機器の転倒・配管破断による機能停止
- 旧耐震建物の多くは、屋上や内部に設置された空調機、大型タンク、変圧器などの重量設備の基礎固定が甘い傾向にあります。地震の慣性力によりこれらの機器が転倒・脱落すると、事業機能が停止するだけでなく、配管が破断して火災、漏水、ガス漏れといった二次被害を引き起こします。旧耐震の構造体が層間変形(上下階の相対的な変形)しやすい特性と相まって、配管の引きちぎれのリスクも増大します。
非構造部材のリスク評価を構造診断と並行して行う理由
旧耐震建物の真の安全性を確認するには、$Is$値を算出する構造診断と同時に、非構造部材の固定状況を専門的に評価する必要があります。
構造診断の視点: 旧耐震の建物は構造体が変形しやすい(靭性が低い)ため、地震の揺れで非構造部材により大きな負荷がかかることを前提に評価しなければなりません。
非構造部材の個別診断: 以下の技術的項目について、個別にチェックを行います。
- 天井・設備機器の固定: 吊りボルトの**振れ止め(ブレース)**の有無と適切性、アンカーボルトの強度と設置方法の確認。
- 外壁・窓ガラス: 地震による層間変形に耐えられる変位追従性があるかどうかの確認。外壁のひび割れや浮きも重要な評価項目です。
- 倉庫のラック: 大規模な倉庫ラックが、建物の揺れに耐えられる強度で床や壁に固定されているか、そして荷崩れ防止対策が施されているかのチェック。
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旧耐震建物の総合的な安全対策ソリューション
旧耐震建物のレジリエンス(回復力)を高めるには、構造体と非構造部材の両方に戦略的な対策が必要です。
- 制震工法による揺れの抑制:
- 構造補強に制震ダンパーを組み込むことで、旧耐震の構造体の変形を抑制し、結果的に非構造部材にかかる負荷を大幅に軽減します。これは二次被害を防ぐための非常に効果的な間接対策です。
- 天井・設備機器の耐震補強:
- 対策: 吊り天井のブレース設置を強化し、設備機器を適切なアンカーと架台で固定し直します。これにより、直下型地震や長周期地震動による加速度に対して、人命と機能を守ります。
- ライフライン配管のフレキシビリティ確保:
- 対策: 重要な配管(消火、ガス、上下水道)の接続部にフレキシブルジョイントを組み込み、建物の変形に配管が追従できるようにします。
旧耐震建物の真のリスクは、目に見えない非構造部材の破壊によって、構造体が倒壊せずとも事業が停止することです。貴社は、この見過ごされてきた二次被害のリスクに対し、いつ、総合的な安全対策を実行されますか?



