近代的なオフィスビルや商業施設において、開放的な空間を演出する「大面積ガラス外装(カーテンウォール)」は欠かせない要素です。しかし、地震大国である日本において、巨大なガラス面は「凶器」になるリスクを孕んでいます。
地震時、建物は多層階にわたって水平方向に変形します。このとき、ガラスを支えるサッシ(フレーム)がその動きにどう追従するかによって、ガラスが「耐える」か「粉砕するか」が決まります。本記事では、大面積ガラスの飛散・落下を防ぐための構造的メカニズムと、最新の設計手法を解説します。
なぜガラスは割れるのか?「層間変位」と「クリアランス」の関係
地震時にガラスが破損する主な原因は、建物の「しなり(層間変位)」です。
- 層間変位のメカニズム: 地震の揺れによって、建物の上の階と下の階で水平方向にズレが生じます。四角形だったサッシの開口部は、平行四辺形に歪みます。
- クリアランスの限界: サッシとガラスの間には通常、わずかな隙間(クリアランス)があります。しかし、建物の歪みがこの隙間を超えると、サッシのフレームがガラスの端部を直接「圧迫」し、逃げ場を失ったガラスは一瞬で破壊されます。
落下・飛散リスクを最小化する3つの設計アプローチ
単に「厚いガラスを使う」だけでは解決しません。重要なのは、揺れを「受け流す」構造です。
1. スライド方式・回転方式のサッシ構造
最新のカーテンウォール設計では、建物が歪んでもサッシ自体が「スライド」したり「回転」したりすることで、ガラスに力が加わらないように設計されています。
- 面内変形追従性: 建築基準法では、地震時の激しい揺れ(1/100〜1/200ラジアン程度の傾き)に対しても、ガラスが脱落しない性能が求められます。
2. 合わせガラスと飛散防止フィルムの活用
万が一、ガラスが破損した場合でも「破片を落とさない」ことが重要です。
- 合わせガラス: 2枚のガラスの間に強靭な中間膜を挟み込みます。破損しても膜がガラスを保持するため、鋭利な破片が地上へ降り注ぐのを防ぎます。
- 飛散防止フィルム: 既存の単板ガラスに対して有効な対策です。後付けが可能で、避難経路に面したガラス窓の二次災害防止に極めて有効です。
3. シーリング材とガスケットの柔軟性
ガラスを固定するゴム状の部品(ガスケット)やシーリング材の弾力性が、初期の振動を吸収する緩衝材となります。これらの経年劣化を放置すると、地震時の追従性が失われ、破損リスクが急激に高まります。
耐震診断で見落とされがちな「非構造部材」の盲点
建物の骨組み(柱・梁)が丈夫でも、外装ガラスが落下すれば、それは「被災」です。診断時には以下の点を確認します。
- 層間変位角の再計算: 耐震補強工事を行った際、建物の剛性が変わることで、かえって特定の階の「しなり」が激しくなり、ガラスに負担がかかるケースがあります。
- 支持金物の腐食調査: ガラスを建物本体に繋ぎ止めているボルトや金物が錆びていないか。ここが破断すれば、ガラスはフレームごと地上へ落下します。
貴社のビルにおいて、「エントランスの巨大な吹き抜けガラスの安全性を確認したい」、あるいは**「築20年が経過し、地震時にガラスが割れて歩行者に怪我をさせないか不安だ」という懸念はございませんか? 建物の揺れ予測とガラスの追従性能を科学的に照合し、落下リスクを判定する「外装ガラス・安全性精密調査」を知りたい方は、無料で3分で完了する「耐震ウェブ診断」をご利用**ください。
▶︎ [https://taishin-senmon.jp/diagnosis/ ]
管理者が実施すべき「ガラスの安全」点検リスト
- シーリングの「ひび割れ・硬化」チェック: 爪を立てても跡がつかないほど硬くなっている場合、地震時のクッション機能が失われています。
- 錆汁(さびじる)の有無: サッシの隙間から茶色の液体が流れた跡があれば、内部の支持金物が腐食しているサインです。
- 過去の揺れでの「きしみ音」: 小さな地震でも「ミシミシ」と大きな音がする場合、フレームの追従限界が近い可能性があります。
透明な美しさは「しなやかな強さ」に支えられる
大面積ガラス外装は、都市の景観を彩る資産ですが、同時に高度な維持管理が求められる設備でもあります。
「割れない設計」と「落ちない工夫」。
この両輪を最新のエンジニアリングで維持することこそが、震災時における企業の法的責任(工作物責任)を果たし、人命とブランド価値を守る唯一の方法です。
貴社は、この**「大面積ガラス」という繊細な資産を、いかなる巨大地震にも耐え抜く強靭なシェルター**へと、いつ、アップデートされますか?



