耐震診断の最終的な目的は、「その建物が地震でどう壊れるか、あるいは耐えられるか」を予測することです。この予測のために用いられる計算手法には、大きく分けて**「静的解析」と「動的解析」**の2種類があります。
一般的な中低層ビルであれば静的解析で十分な場合が多いですが、高層ビル、大規模工場、複雑な形状の建築物では、動的解析を用いなければ真の地震リスクを見誤る可能性があります。本記事では、これら2つの手法の決定的な違いと、使い分けの判断基準について解説します。
静的解析(等価静的解析・保有水平耐力計算)
静的解析は、建物を「横からの一定の力(地震力)」で押し続け、どこまで耐えられるかを計算する手法です。
- メカニズム: 地震の揺れを「慣性力」という静止した力に置き換えてシミュレーションします。
- メリット: 計算負荷が小さく、コストと時間を抑えられます。日本の建築基準法の基本となっており、判定基準が明確です。
- 適した建物: 形状がシンプルで、高さが31m(およそ10階建て)以下の一般的なオフィスビルやマンション。
動的解析(時刻歴応答解析)
動的解析は、コンピューター上に再現した建物のモデルに対して、過去の地震(阪神・淡路大震災など)の「揺れの波形データ」を実際に入力し、1秒1秒の挙動を再現する手法です。
- メカニズム: 「時間」の概念を組み込み、建物が揺れ始めた瞬間から収まるまでの「揺れの連続的な変化」を追跡します。
- メリット: 建物の「粘り」や、特定の階に揺れが集中する現象、長周期地震動による増幅などを極めて正確に予測できます。
- 適した建物: 高層ビル(超高層)、免震・制震建物、アトリウムや複雑な吹き抜けを持つ特殊な形状の建物。
どちらを選ぶべきか? 判断のポイント
診断手法の選定は、建物の「高さ」と「複雑さ」によって決まります。
- 静的解析が向いているケース:
- 中低層の一般的な形状のビル。
- 安全側(保守的)な概算で十分な場合。
- コストと期間を優先したいプロジェクト。
- 動的解析が必要なケース:
- 高層、大規模、または特殊な形状(L字型や複雑な断面)の建物。
- 免震装置や制震装置の効果を精密に評価したい場合。
- 現実的な挙動に基づき、過剰な補強コストを抑えたい場合。
なぜ大規模ビルに「動的解析」が必要なのか
大規模な建物は、揺れのリズム(固有周期)が長く、地震波との共振(シンクロ)が起きやすいためです。静的解析では、こうした「タイミングによる揺れの増幅」を正確に評価できず、過小評価(危険)または過大評価(不必要な補強コスト)に繋がる恐れがあります。
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実務担当者がコンサルタントに確認すべき質問
- 「この建物は時刻歴応答解析の対象になりますか?」: 法的な義務がなくても、事業継続(BCP)の観点から動的解析を行うメリットがあるか確認しましょう。
- 「解析に用いる地震波は何ですか?」: 想定される南海トラフ巨大地震や、敷地直下の活断層による揺れ(サイト特性波)が含まれているかチェックします。
- 「補強設計へのフィードバックは?」: 解析結果をもとに、最も効果的な位置に制震ダンパーを配置するなどの最適化が可能か尋ねてみてください。
手法の選定が「補強コスト」を左右する
静的解析は「力」の勝負ですが、動的解析は「時間とリズム」の勝負です。大規模な建物ほど、このリズムを正しく把握することで、過剰な補強を避け、本当に必要な箇所にだけ投資を集中させることができます。
適切な解析手法の選定は、単なる安全確認ではなく、投資の最適化です。 科学的な根拠に基づき、貴社の資産が地震に対してどのように応答するかを明確にすることで、確信を持って将来の事業計画を立てることができます。
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