💎 カーテンウォールの安全性:地震時の層間変形に対する追従性と脱落リスクの最新評価基準

近代的なオフィスビルや高層ビルの象徴とも言える、全面ガラス張りの外観。これを実現しているのが「カーテンウォール」と呼ばれる外壁構造です。カーテンウォールは、建物の骨組み(構造体)に「カーテン」のように吊り下げられた非耐力壁であり、建物自体の重さを支える役割は持っていません。 

しかし、地震大国である日本において、この美しいガラスの壁は、地震時に最も過酷な試練を受ける部位の一つです。建物が大きく揺れた際、構造体の動きに外壁がどう「追従」するか。この設計が不十分であれば、ガラスの飛散やパネルの脱落という、地上への壊滅的な二次災害を引き起こします。 

本記事では、カーテンウォールの安全性を左右する「層間変形追従性」のメカニズムと、最新の耐震評価基準について詳しく解説します。 

 

「層間変形」がカーテンウォールを破壊するメカニズム 

地震が発生すると、建物の各階は水平方向にズレるように揺れます。この「下の階の床」と「上の階の床」の水平方向のズレを**「層間変形(そうかんへんけい)」**と呼びます。 

  1. 平行四辺形への変形

建物の骨組みが長方形から平行四辺形へと歪むとき、その枠に取り付けられた外壁パネルやガラスにも同じだけの歪みが加わります。 

  • リスク: もしパネルが骨組みにガッチリと固定されすぎていれば、パネル自体が無理な力で押し潰されたり、接合部(ファスナー)が破断したりします。 
  1. 追従性の限界と「衝突」

カーテンウォールには、この歪みを吸収するための「遊び(クリアランス)」が設計されています。しかし、想定を超える巨大な地震が来た場合、パネル同士が衝突したり、サッシからガラスが外れて落下したりするリスクが生じます。 

 

カーテンウォールの主な構造形式と耐震特性 

カーテンウォールには大きく分けて2つの方式があり、それぞれ地震時の挙動が異なります。 

  • 方立方式(しんちゅうほうしき) 現場で縦の骨組み(方立)を組み、そこにガラスやパネルをはめ込んでいく方式です。 
    • 耐震性: 部材が細かく分かれているため、小さな揺れには柔軟に対応しますが、接合箇所が多いため、経年劣化によるネジの緩みやシールの破断が追従性を低下させる要因になります。 
  • ユニット方式 工場であらかじめ組み立てられた巨大なパネル(ユニット)を、現場でジグソーパズルのように取り付けていく方式です。 
    • 耐震性: ユニット同士の継ぎ目全体で揺れを吸収するため、高い追従性を持たせやすいのが特徴です。近年の高層ビルではこの方式が主流となっています。 

 

最新の評価基準:「面内変形追従性」の重要性 

東日本大震災や熊本地震を経て、カーテンウォールの耐震基準はより厳格化されています。現在、重要視されているのが**「JIS A 1414」**などの試験基準に基づいた評価です。 

  1. 損傷限界と安全限界
  • 損傷限界: 地震後、軽微な補修でそのまま使い続けられるレベル(一般的に層間変形角 1/200 程度)。 
  • 安全限界: パネルが脱落し、人命に危害を加えないレベル(一般的に層間変形角 1/100 から 1/60 程度)。 

最新の診断では、建物全体の耐震診断だけでなく、この「外壁がどれだけの揺れまで耐え、いつ脱落するか」を個別にシミュレーションすることが求められています。 

  1. シーリング材の劣化と脱落リスク

ガラスを固定しているゴム状の部材(シーリング材やガスケット)は、10年から15年で硬化し、柔軟性を失います。 

  • サイレントリスク: シーリングが硬くなると、本来「逃げ」を作るはずの空間がロックされてしまい、地震時にガラスがバキバキと割れて降り注ぐ原因となります。 

 

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脱落を防ぐための「二次災害防止対策」 

既存のカーテンウォールの安全性を高めるためには、以下の対策が有効です。 

  1. 飛散防止フィルムの貼付 万が一ガラスが割れても、破片が飛び散らずにサッシに留まるようにします。これは最も基本的かつ効果的な対策です。 
  2. スライド機構の再調整 パネルを吊り下げている金具(ファスナー)が、地震時に動くように設計されているか点検します。錆び付いて固着している場合は、清掃や交換によって「動く能力」を回復させます。 
  3. バックアップ材の更新 劣化したシーリング材を打ち替え、パネル間の「クッション機能」を復活させます。 

 

結論:意匠性と安全性の「真の調和」を目指して 

カーテンウォールは、建物の「顔」であると同時に、人命を守る「盾」でなければなりません。 

建物本体の耐震補強を行って、骨組みをガチガチに固めたとしても、外壁の追従性が追いついていなければ、地震時の被害を最小化することはできません。「骨組み(構造体)」と「皮(外壁)」の挙動をセットで評価することが、都市部におけるビル管理のスタンダードとなっています。 

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