耐震診断や設計において、建物そのものの強さ(上部構造)だけでなく、その「足元」である地盤との関係を無視することはできません。これを**「地盤・建物相互作用(SSI:Soil-Structure Interaction)」**と呼びます。
特に軟弱な地盤に建つ建物では、地盤が揺れることで建物が揺らされるだけでなく、**「揺れている建物が地盤をさらに揺らし、その結果として建物の応答が増幅される」**という複雑な現象が起こります。本記事では、SSI効果が建物の安全性能にどのようなインパクトを与えるのかを解説します。
SSI効果が生じる「2つのメカニズム」
SSIには、大きく分けて「運動学的相互作用」と「動力学的相互作用」の2つの側面があります。
1. 運動学的相互作用(Kinematic Interaction)
地盤の中に基礎や杭が埋まっていることで、地盤だけの揺れ方と、基礎に拘束された揺れ方に差が生じる現象です。
- ポイント: 巨大な基礎を持つ建物は、地盤の細かな揺れ(高周波成分)を平均化して和らげる効果(フィルタリング効果)がありますが、軟弱地盤では逆に特定の周期を強調してしまうことがあります。
2. 動力学的相互作用(Inertial Interaction)
建物の重さによる「慣性力」が地盤に伝わり、地盤をさらに変形させる現象です。
- リスク: 軟弱地盤では、建物が揺れることで基礎の下の土が「バネ」のように動き、建物全体の重心が大きく揺さぶられます。これにより、硬い地盤に建っている時よりも、建物の**「固有周期」が長くなる(ゆっくり大きく揺れる)**傾向があります。
軟弱地盤がもたらす「応答増幅」の恐怖
なぜ軟弱地盤(埋立地や沖積平野)でのSSIが危険視されるのでしょうか。
- 共振リスクの増大: 軟弱地盤自体の揺れやすい周期(地盤の卓越周期)と、SSIによって長くなった建物の周期が一致すると、**「共振」**が発生します。これにより、上部構造に加わる地震力は、設計時の想定を超えて数倍に跳ね上がることがあります。
- 減衰効果の減退: 通常、建物が揺れるエネルギーは地盤へと逃げていきます(放射減衰)。しかし、周囲の地盤が極端に柔らかい場合、エネルギーが逃げ場を失い、建物内に長時間とどまって揺れを増幅させ続けることがあります。
耐震診断における「SSI」の考慮と実務
最新の耐震診断基準では、このSSI効果を無視せず、高度なモデル化を行うことが推奨されています。
A. 基礎・杭の「非線形」評価
大地震時には、杭の周りの土が液状化したり、隙間(離隔)ができたりします。これらを考慮した「非線形バネモデル」を用いることで、建物が実際にどれほど傾き、どれほど揺れるかを精密に予測します。
B. 「等価線形化法」による解析
地盤の硬さが揺れの大きさによって変化することを考慮し、建物の応答を補正します。これにより、過小評価されていた変位(ゆがみ)を正しく捉え、補強が必要な箇所を特定します。
貴社の施設が湾岸部や河川沿いの軟弱地盤に位置している場合、「上部構造の計算」だけでは真のリスクを見逃している可能性があります。 地盤の動的な特性を反映し、建物との相互作用を科学的に解析する**「SSI対応・精密耐震解析」を知りたい方は、無料で3分で完了する「耐震ウェブ診断」をご利用**ください。
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実務担当者が確認すべき「地盤と基礎」のポイント
- ボーリングデータの再確認: 建物直下の地層構成(N値)が、最新の地震動予測地図と照らしてどう評価されるかを確認します。
- 不同沈下の履歴: 過去に建物がわずかに傾いている(不同沈下がある)場合、SSI効果による地震時の増幅が偏って発生しやすいため、注意が必要です。
- 基礎形式の把握: 直接基礎(ベタ基礎等)か杭基礎かによって、SSIの効き方は大きく異なります。特に古い杭基礎の場合、地盤の揺れに杭が耐えられず、建物ごと転倒するリスクを評価する必要があります。
建物は「地盤」という海に浮かぶ船である
地震において、建物と地盤は切り離せない一つのシステムです。特に軟弱地盤におけるSSI効果を正しく理解し、対策を講じることは、大地震時の想定外の被害を防ぐための絶対条件です。
足元の不確実性を、解析によって「確信」に変えること。 建物単体の強さに頼るのではなく、地盤との対話を通じて、真に揺れに強いレジリエンス(回復力)を追求してください。
貴社は、この**「地盤・建物相互作用」という高度なリスク要因を味方につけ、いかなる軟弱地盤の上でも揺るがない最強の拠点**を、いつ、確立されますか?



