2024年1月に発生した能登半島地震、およびそれ以前から続く群発地震は、日本の耐震設計のあり方に大きな一石を投じました。それは、「一度の激震を耐えれば良い」という従来の想定が、もはや通用しないという現実です。
建物が命を守り、その後も住み続けるために必要なのは、法的な最低ライン(耐震等級1)ではなく、ダメージが蓄積しても倒壊に至らない**「耐震余力(Resilience Margin)」**です。本記事では、複数回の激震に耐えるためのメカニズムと対策を解説します。
能登で起きた「とどめを刺す」ダメージの蓄積
能登半島では、本震の前に数年間にわたって群発地震が続いていました。この「目に見えないダメージの蓄積」が被害を拡大させました。
- 接合部の緩みと塑性変形: 最初の揺れで柱と梁の接合部や金物がわずかに緩み、建物全体の剛性が低下します。外観上は無傷に見えても、構造体は「しなやかさ(粘り)」を失った状態になります。
- 繰り返しの「揺り戻し」による累積損傷: 2016年の熊本地震と同様、震度7クラスが複数回、あるいは震度6強が立て続けに襲うと、一度目の揺れを耐えた「新耐震基準」の建物であっても、二度目、三度目の揺れで耐力限界を超え、一気に倒壊に至ります。
「耐震余力」を数値化・確保する3つの鍵
単に「壊れない」だけでなく、「何度来ても壊れない」ための設計思想が必要です。
1. 耐震等級3(基準の1.5倍)が「最低ライン」へ
現在の建築基準法(耐震等級1)は、「数百年に一度の地震で倒壊しない」ことを目標としていますが、これは「一度耐えれば、その後は建て替えが必要になる可能性」を許容しています。
- 教訓: 繰り返す地震に耐え、住み続けるためには、消防署や警察署と同等の耐震等級3(等級1の1.5倍の耐力)を確保することが、民間建築物においても標準的な「余力」の指標となります。
2. 「制震技術」によるエネルギー吸収
耐震(硬さ)だけで守ろうとすると、揺れるたびに構造体にダメージが蓄積します。
- 制震ダンパーの役割: 揺れを熱エネルギーに変えて吸収する「制震装置」を組み込むことで、構造体へのダメージを大幅に軽減し、繰り返しの揺れに対しても建物の健全性を維持します。
3. 非構造部材を含めた「継続使用性」の評価
能登半島地震では、構造体は無事でも、基礎の破壊や外壁の大きな損傷により、継続使用が困難になったケースが多く見られました。
- 余力の評価: 地盤条件や基礎構造、さらには地震後の補修のしやすさまでを含めて「余力」と捉える視点が不可欠です。
地震後の「安全チェック」の重要性
大きな地震が一度収まった後、建物の中に「住み続けても良いか」を判断するプロセスが、二次被害を防ぐ鍵となります。
- 被災度区分判定: 専門家による調査を行い、構造部材にどれだけの余力が残っているかを判定します。目に見えない接合部の破断や、基礎のクラックを早期に発見することが、余震による倒壊を防ぎます。
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実務担当者が実施すべき「余力確保」のアクション
- 「耐震等級3」へのアップグレード検討: 既存ビルの改修時、単なる「IS値0.6」超えを目指すのではなく、可能な限り高い耐力値を設定することで、将来の群発地震リスクに備えます。
- 制震装置の後付け(レトロフィット): 古い建物でも、特定の階に制震ダンパーを追加することで、繰り返しの揺れに対する「粘り」を飛躍的に向上させることができます。
- 地盤と基礎のセット診断: 能登では地盤の隆起や液状化が構造に影響しました。上部構造だけでなく、足元の「地盤の余力」もセットで評価してください。
耐震は「一度きりの勝負」ではない
能登半島地震が示したのは、地震は「点」ではなく「線(連続)」で襲ってくるという恐怖です。
「一度耐えたから安心」という慢心を捨て、常に「次の揺れ」に耐えられる余力を残しておくこと。
科学的な解析によって建物のダメージを可視化し、適切な補強を重ねることで、繰り返す自然の脅威から人命と資産を永続的に守り抜くことができます。
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