脱炭素社会の実現に向け、中大規模建築物の構造を「鉄骨(S造)」と「木造」で組み合わせたハイブリッド構造が注目を集めています。木材の軽量性と断熱性、鉄骨の強度と柔軟性を掛け合わせることで、意匠性と環境性能を両立できるためです。
しかし、異なる性質を持つ素材を混ぜることは、耐震設計において高度な技術的課題を生みます。本記事では、このハイブリッド構造特有の課題と、安全性を担保するための解決策を解説します。
ハイブリッド構造が抱える「3つの耐震課題」
性質が異なる素材を組み合わせる際、最も警戒すべきは「力の伝わり方」の不一致です。
- 剛性と変形の差: 鉄骨は「しなって耐える(柔)」性質が強く、木造(特にCLTや集成材の耐力壁)は「硬く耐える(剛)」性質があります。地震時に両者がバラバラに動こうとすると、接合部に過大な負荷がかかります。
- 重量バランスの複雑化: 木造部分は鉄骨より圧倒的に軽いため、建物の「重心(重さの中心)」と「剛心(強さの中心)」がズレやすくなります。これが「ねじれ振動」を誘発する原因となります。
- 接合部(異種部材間)の脆弱性: 鉄と木を繋ぐボルトや金物部分に応力が集中します。木材側での「めり込み」や「割れ」が発生しやすく、ここが破壊の起点になるリスクがあります。
安全性を最大化する「3つの解決策」
これらの課題を克服し、鉄骨造以上のレジリエンス(回復力)を持たせるための手法が確立されつつあります。
1. 「剛」と「柔」の役割分担:コア構造の採用
建物の中心部や階段室を強固な鉄骨造(またはRC造)の「コア」として設計し、外周部や床に木材を使用する手法です。
- メリット: 地震力の大部分を鉄骨コアが負担し、木質部分は意匠と軽量化に特化させることで、建物全体の挙動を安定させます。
2. 高性能コネクタ(ラグスクリューボルト等)の開発
木材の「めり込み」を許容しながら、鉄骨の引張力に耐える特殊な接合金物が使用されます。
- 技術: 木材内部に深く埋め込まれた鋼棒が、異種部材間のエネルギー伝達をスムーズにし、接合部での急激な破断を防ぎます。
3. 木質耐火被覆の活用(木鋼ハイブリッド)
鉄骨の柱を厚い木材で包み込む構造です。
- 効果: 木材が「耐火材」として機能するだけでなく、地震時には鉄骨の「座屈(折れ曲がり)」を抑制するバックアップ材として機能し、建物の粘り強さを向上させます。
耐震診断とメンテナンスの盲点
ハイブリッド建築を維持する上で、施設管理者が注意すべきは「経年変化」です。
- 含水率と収縮の差: 木材は乾燥によって収縮しますが、鉄骨は変化しません。長期間の運用で接合部のボルトに「緩み」が生じていないか、定期的なトルク管理や非破壊検査が不可欠です。
- 防腐・防蟻対策の連動: 構造的に重要な接合部が腐朽すれば、計算上の耐震性能は一気に失われます。構造体としての健全性を保つため、維持管理計画には「木質部の腐食調査」を組み込む必要があります。
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実務担当者が確認すべき「設計の質」
- 「時刻歴応答解析」の実施有無: 大規模なハイブリッド建築の場合、簡易な静的計算ではなく、動的な解析で異種部材の共振リスクを評価しているか確認してください。
- 木材の品質証明: 使用されるCLTや集成材の強度がJAS規格に基づき、構造計算の前提条件と一致しているか、エビデンスを確保します。
- 接合部の点検口: 竣工後、主要な接合部が目視確認できるような点検口が設計に盛り込まれているかチェックします。
ハイブリッドは「設計の緻密さ」で決まる
「鉄骨+木造」のハイブリッド構造は、単なる流行ではなく、建物の軽量化による「地震力の低減」という構造的メリットも秘めています。
素材の弱点を補い、強みを引き出す緻密なディテール設計。
これこそが、サステナブルな社会と、地震に負けない強靭なインフラを両立させるための鍵となります。
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