不動産の売買や賃貸において、ビルの所有者が最も慎重に対応すべき法律の一つが「宅地建物取引法(宅建法)」です。特に耐震性能に関する情報は、入居者や購入者の意思決定に直結するため、重要事項説明(重説)における記載内容が不適切であれば、所有者は甚大な法的リスクを背負うことになります。
改正を重ねる宅建法の基準を正しく理解し、どのようにリスクを回避すべきか。施設管理者が知っておくべき実務のポイントを解説します。
宅建法が求める「耐震説明」の義務とは
宅建法では、建物が「耐震診断を受けているか否か」および「その内容」を重要事項として説明することを義務付けています。ここで注意すべきは、単に「古いから危ない」と伝えるだけでは不十分な点です。
- 昭和56年(1981年)以前の建物(旧耐震基準):
この時期に新築された建物については、耐震診断の実施有無を必ず説明しなければなりません。診断を実施している場合は、その結果(Is値など)も説明の対象となります。
- 耐震診断未実施のリスク:
「診断を受けていない」と説明すること自体は法違反ではありません。しかし、その説明を聞いた借り主や買い主が「安全性が不明な物件」と判断し、成約率の低下や賃料の値引き要求に繋がるのが実態です。
- 事実に反する説明の重罪:
耐震補強を行っていないにもかかわらず「補強済み」と伝えたり、Is値を改ざんして説明したりした場合、宅建法違反だけでなく、民法上の不法行為責任や契約解除の対象となります。
ビル所有者が直面する「3つの法的紛争パターン」
重要事項説明の不備は、震災後に以下のような形で牙を剥きます。
1. 工作物責任(民法717条)との連動
地震で建物が損壊し、入居者が死傷した場合、重説で耐震性の不足を正しく説明していなければ、「占有者(所有者)が瑕疵を知りながら放置し、かつ説明義務を怠った」とみなされ、無過失責任に近い厳しい賠償責任を問われるリスクが高まります。
2. 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)
売買において、事前の重説と実際の耐震性能が異なっていた場合、買い主から修繕請求、代金減額請求、あるいは契約そのものの解除を突きつけられる可能性があります。
3. 仲介業者からの求償
仲介した宅建業者が、所有者から提供された誤った情報をもとに重説を行い、後に損害賠償を請求された場合、その業者は情報の提供元であるビル所有者に対して損害の肩代わり(求償)を求めてきます。
リスクを「ゼロ」に近づける実務的な回避策
法的責任から自社を守るためには、曖昧な表現を排除し、客観的な証拠(エビデンス)に基づいた情報開示が唯一の解決策です。
- 最新の「耐震診断報告書」を備え置く:
「あるはずだ」ではなく、すぐに写しを提出できる状態で保管します。診断が古い場合は、現代の基準で有効か再評価を行い、その結果を重説に反映させます。
- 「耐震補強済み」の定義を明確にする:
どの部位を、どのレベル(Is値いくつ以上)まで補強したのかを明文化します。部分的な補強を「全体補強」と誤認させない説明が必要です。
- 診断未実施なら「実施予定」を盛り込む:
現時点で未実施であっても、今後の診断計画や改修予定を特約や重説の補足資料として提示することで、相手方の不安を払拭しつつ、説明義務を誠実に果たしている証跡を残します。
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施設管理者が重説の前に確認すべき「3つの証跡」
- 検査済証の有無:
- 建築当時の法手続きが正しく完了しているか。これがない場合、耐震診断以前にコンプライアンス上の懸念が生じます。
- 耐震診断結果の数値(Is値):
- 単に「合格」ではなく、$Is=0.6$以上といった具体的な数値を把握し、それがどの方角(X方向・Y方向)の結果かを確認します。
- 過去の「修繕・補強履歴」の整理:
- いつ、どこの会社が、どのような工法で補強したか。これらの記録を重説の別添資料として準備することで、情報の真正性が担保されます。
安全は「点」ではなく「線」で管理するもの
重要事項説明は、単なる手続き上の「点」ではありません。建物を取得し、維持し、次の世代や所有者へと引き継ぐ「線」の管理の集大成です。
正しい情報を、正しい形式で、誠実に伝えること。
この当たり前のプロセスを徹底することこそが、震災という不可抗力の事態において、ビル所有者を理不尽な訴訟から守り、不動産価値の毀損を防ぐ最強のリーガル・プロテクション(法的防御)となります。
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