巨大地震において、建物の骨組みが無事であっても、屋上の給水タンクが転倒したり、受変電設備(キュービクル)が移動・損壊したりすることで、建物全体の機能が完全に停止するケースが多発しています。いわゆる「ライフラインの断絶」です。
これらの重要設備を支えているのは、わずか数本の「あと施工アンカー」や「埋め込みアンカー」です。設備を「置いているだけ」の状態から、地震の衝撃に耐えうる「固定」へと昇華させるための、強度計算の要諦を解説します。
なぜ「設備」は建物以上に揺れるのか:応答倍率の罠
設備機器の耐震設計において、最も考慮すべきは「建物との共振」です。
- 応答倍率の増幅:
地面の揺れは、建物の階層を上がるごとに増幅されます。特に屋上に設置された設備は、地表の数倍の加速度(応答倍率)を受けることになり、想像以上の水平力と引き抜き力がアンカーに加わります。
- 重心の高い機器のリスク:
給水タンク(特に高置水槽)や縦型の空調機は重心が高いため、地震時に「ロッキング(首振り運動)」を起こしやすく、特定のアンカーに荷重が集中して破断・脱落を招きます。
固定強度計算で押さえるべき「3つの核心」
設備を確実に固定するためには、計算書において以下の3点を厳格に評価する必要があります。
1. 正確な設計用水平地震力($F_h$)の算出
機器の重量($W$)に、地域や階数、設備の重要度に応じた「設計用水平震度($K_h$)」を乗じて算出します。
- 重要度の考慮: 避難所や病院などの重要拠点では、一般建築物よりも高い震度設定(例:$K_h = 1.0$〜$2.0$以上)で計算し、アンカーの余力を持たせることが不可欠です。
2. アンカーボルトの「引張荷重」と「せん断荷重」の複合評価
地震時、アンカーには「引き抜こうとする力(引張)」と「横にずらそうとする力(せん断)」が同時に作用します。
- 要諦: 単体での強度確認ではなく、両者が同時にかかった際の「複合応力」が、ボルト自体の強度およびコンクリートの「コーン状破壊(引き抜き破壊)」耐性を下回っているかを確認します。
3. 下地コンクリートの「有効埋込み深さ」
アンカーの種類(金属拡張、接着系など)によって、必要な埋込み深さは異なります。
- 課題: 既存ビルの屋上などは、防水層やシンダーコンクリート(押さえコンクリート)があるため、構造体である「スラブ」まで確実に達しているか、その有効長が計算の前提と一致しているかが成否を分けます。
インフラ停止を防ぐ「機能維持」の視点
単に「落ちない」だけでなく、「震災後も使える」ための補強設計が求められます。
- フレキシブル継手の併用:
- タンク本体を強固に固定しても、接続されている配管が硬直していると、建物の変形に耐えきれず破断します。アンカー固定とセットで、揺れを吸収するジョイントの設置を確認してください。
- 耐震ストッパーの追加:
- 防振ゴムの上に載っている空調機などは、アンカーだけでは不十分な場合があります。横方向の移動を物理的に制限する「耐震ストッパー」を併設することで、アンカーへの負荷を分散させます。
貴社の施設において、「キュービクルや貯水槽が古いボルトで止まっているだけで、最新の耐震基準(官庁営繕基準など)に基づいた計算がなされているか不明だ」という懸念はありませんか? 設備機器の重量と設置階から、必要なアンカー本数とサイズを即座に算出する**「設備耐震・固定強度リチェック」を知りたい方は、無料で3分で完了する「耐震ウェブ診断」をご利用**ください。
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実務担当者が現場で確認すべき「3つのチェックポイント」
- アンカーの「出シロ(ネジ山の余り)」:
- ナットからボルトが十分に突き出しているか。短い場合、十分な埋込み深さが確保されていない可能性があります。
- 縁端距離(へりあき)の確保:
- コンクリートの端に近い場所にアンカーが打たれていないか。端に近すぎると、地震時にコンクリートが「縁欠け」を起こして容易に抜けてしまいます。
- 異種金属接触腐食(電食):
- ステンレスのタンクと鉄のボルトなど、異なる金属が接触してボルトが腐食していないか。錆びたアンカーは、計算上の強度の半分も発揮できません。
安全は「点」ではなく「線」で管理するもの
設備機器の耐震アンカーは、設置時という「点」の作業では完結しません。建物の揺れの変化、機器の更新、そしてボルトの経年劣化という「線」の時間軸の中で、その有効性を問い続ける必要があります。
数センチのボルト一本の不備が、数億円の設備と事業の継続を奪います。
正確な強度計算に基づいた施工と、定期的な増し締めや腐食点検を継続すること。この地道な「線」の管理こそが、巨大地震という極限状態において、建物を「ただの箱」にさせず、命をつなぐインフラとして機能させ続けるための、唯一の技術的担保となります。
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