その「震度7」の想定は、建物の倒壊率リスクに直結します
大規模な工場、オフィスビル、倉庫といった重要施設を管理・経営されている皆様にとって、震度7という極めて強い地震動の想定は、事業継続計画（BCP）における最大の懸念材料でしょう。しかし、ニュースで報じられる「倒壊率」の数値は、漠然とした不安を煽るだけで、貴社の具体的な建物リスクを判断する材料にはなり得ません。
「震度7の地震で、自分の建物が倒壊する確率はどれくらいなのか？」「築年数によって、どれほどリスクが違うのか？」
本記事では、プロの耐震コンサルタントとして、震度7の揺れが建物にもたらす物理的な影響と、建物の建築時期（耐震基準）による倒壊リスクの科学的な違いを明確に解説します。この記事を読むことで、漠然とした不安を解消し、客観的なデータに基づいた事業リスク評価を行うための指針が得られます。
耐震基準が倒壊率を決定する
震度7が建物に意味すること
震度7は、気象庁震度階級における最大値であり、「立っていることができず、はいつくばわないと動けない。」レベルの極めて強い揺れを意味します。この揺れは、旧耐震基準の建物に対して、構造体に致命的な損傷を与え、倒壊に至らせる十分なエネルギーを持ちます。
- 震度と加速度の関係: 震度は揺れの大きさ（加速度や速度）に基づきますが、震度7は計測震度6.5以上の揺れであり、建物の設計基準を遥かに超える、建材の強度限界に近い負荷をかけます。
- 倒壊率を左右する要因: 倒壊リスクは、地盤の状況、揺れの周期、建物の設計品質など複合的な要因で決まりますが、最も大きな要素は建築時期、すなわち適用された耐震基準です。
建築時期別に見る大規模建物の倒壊リスク
国の研究機関などの調査結果から、大規模地震における建物の倒壊リスクは、新旧の耐震基準で劇的に異なることが示されています。
| 建築時期 | 適用基準 | 震度7相当の揺れにおける倒壊リスクの傾向 | BCP上の留意点 |
| 旧耐震（1981年5月以前） | 震度5程度の揺れでの損傷防止が主眼。 | 倒壊・崩壊リスクが極めて高い。（大規模なRC造建物で、最大20%以上の倒壊・大破率を想定するデータもある。） | **最優先で診断・補強が必要。**事業継続は不可能。 |
| 新耐震（1981年6月以降） | 震度6強～7程度の揺れでも倒壊・崩壊しないことが目標。 | 倒壊リスクは大幅に低い。（倒壊率は1%未満とされることが多い。） | 倒壊はしなくても、機能停止リスク（非構造部材の損傷、設備の破損）への対策が必要。 |
| 2000年基準（木造） | 地盤や接合部等の基準が強化された。 | 新耐震基準の中でも、より高い安全性を持つ。 | 倒壊リスクは極めて低いが、早期の事業再開のための内部対策が必要。 |
倒壊リスクを客観的に評価する重要性
貴社の建物が震度7で倒壊するかどうかを判断するには、抽象的な統計値ではなく、建物の構造的な「体力」を数値化することが必須です。
- 構造耐震指標（Is値）: 耐震診断で算出されるIs値は、建物が持つ倒壊に対する体力を示す客観的な数値です。
- Is値の目安: 大地震で倒壊・崩壊する危険性が低いとされる目安は**$Is \geqq 0.6$**です。この数値が0.6未満の場合、震度7相当の揺れで倒壊するリスクが高いと判断されます。
あなたの建物は、震度7で倒壊しない「客観的な証拠」を持っていますか？
大規模建物の経営者として、震度7というリスクに対し、「多分大丈夫だろう」という希望的観測に頼ることはできません。Is値という客観的なデータに基づいて、倒壊リスクを正確に把握し、必要な対策を講じることが、従業員の安全と事業継続の前提です。
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倒壊率は「Is値」で管理できる
震度7という極めて大きなリスクは、建築時期と構造耐震指標（Is値）によって大きく左右されます。旧耐震基準の建物は特にリスクが高く、即座の対策が必要です。BCPの実効性を確保するためには、倒壊リスクを曖昧にせず、「Is値」という数値で管理することが、賢明な経営判断です。
- 旧耐震基準の建物は、震度7相当の揺れで倒壊するリスクが極めて高いため、最優先で対応すべきです。
- 倒壊リスクは、専門家による耐震診断で算出される**Is値（0.6以上が目安）**によって客観的に評価できます。
- 倒壊リスクを回避し、事業継続を確実なものにするための最初のステップは、現状の耐震性能を数値化することです。
貴社の建物は、万が一の震度7の揺れに対して、「倒壊しない」という確かな保証を、客観的なデータで証明できますか？その証明を得るための行動を起こす準備はできていますか？
