私たちが「地震対策」を考えるとき、その多くは水平方向の揺れ、つまり「横揺れ」への対策に終始しがちです。しかし、近年の内陸直下型地震において、構造エンジニアが最も警戒しているのは、地面から突き上げるような激しい「垂直動(縦揺れ)」のリスクです。
特に大規模な建築物において、数千トンの自重を支える「基礎」や「杭頭部(くいとうぶ)」は、定常的な圧縮荷重に加え、地震による急激な上下動が重なることで、設計時の想定を超えた過酷な負荷にさらされます。この「突き上げ」のメカニズムを理解し、適切な評価を行うことは、内陸部に拠点を置く企業のBCP(事業継続計画)において極めて重要な課題となっています。
垂直動が引き起こす「変動軸力」の恐怖
大規模建築物の柱には、常に建物の重さによる「押し下げる力」がかかっています。地震が発生し、垂直方向の加速度が加わると、この力は劇的に変動します。
1. 圧縮力の増大による破壊
上向きの突き上げが発生した瞬間、柱や基礎には自重に加えて巨大な慣性力が加わります。
- リスク: コンクリートの圧縮強度限界を超えた場合、柱の根元や杭頭部が粉々に砕ける「圧壊(あっかい)」が発生します。これは建物全体の沈下や倒壊に直結する致命的な損傷です。
2. 引張力(浮き上がり)の発生
逆に、地面が急激に下がるとき、建物には「浮き上がろうとする力」が働きます。
- リスク: 通常、コンクリートは引張力に対して非常に脆弱です。自重による圧縮力を超える引張力が発生すると、杭と建物の接合部(杭頭部)が引き抜かれ、あるいは鉄筋が破断することで、建物の定着性が失われます。
内陸型地震特有の「震源との距離」が生むリスク
南海トラフのような海溝型地震に比べ、内陸直下型地震は震源が建物の真下にあるケースが多く、垂直動が減衰せずにダイレクトに伝わります。
- P波(縦波)の先行: 地震波のうち、伝播速度の速いP波は縦揺れとして最初に到達します。この最初の「一突き」で基礎や杭頭部がダメージを受けると、その後にやってくる本震(S波:横揺れ)に対して建物が踏ん張ることができず、崩壊を加速させる結果となります。
- 基礎コンクリートの「せん断破壊」: 上下方向の激しい衝撃は、基礎のスラブ(床版)に対してパンチング(踏み抜き)のような力を与えます。これにより、柱が基礎を突き抜けてしまうような壊滅的な被害が生じることもあります。
免震建築物の「弱点」としての垂直動
横揺れを劇的に抑える「免震構造」は、非常に優れた技術ですが、垂直動に対しては注意が必要です。
- 免震部材の引張限界: 多くの積層ゴム免震装置は、横方向の変形には強いものの、上下方向の引張(浮き上がり)には弱い性質があります。激しい垂直動によって装置に過大な引張力がかかると、ゴムが破断したり、装置そのものが機能を喪失したりするリスクがあります。
- 突き上げによる「飛び跳ね」: 垂直加速度が1G(重力加速度)を超えると、建物が物理的に浮き上がり、再び着地する際の衝撃で内部の精密機器や配管が破壊されることがあります。
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垂直動リスクを低減するための補強・設計戦略
現代の構造エンジニアリングでは、これら垂直方向の衝撃をいかに分散・吸収するかについて、以下のような対策が講じられています。
- 杭頭部の接合強化(半固定・ピン接合への変更): 杭と基礎をガチガチに固めすぎず、あえて「遊び」や回転の自由度を持たせることで、垂直・水平方向の衝撃力を逃がす設計が有効な場合があります。
- 縦方向のエネルギー吸収ダンパー: 建物の柱の一部や、機械の架台部分に垂直方向の振動を吸収するオイルダンパーや空気ばねを導入し、突き上げの衝撃を和らげます。
- 基礎スラブの増厚と補強鉄筋の追加: パンチング破壊を防ぐために、柱脚(柱の根元)付近の基礎コンクリートを厚くし、垂直方向のせん断力に対抗する「あばら筋」を密に配置します。
横揺れ対策だけでは守れない資産がある
内陸型地震は、前触れなく襲ってくる「垂直方向の打撃」が建物の息の根を止めることがあります。地上部分の壁やブレスを増やして横揺れに強くしたとしても、その力を支える「足元」が突き上げで破壊されてしまえば、すべての対策は無に帰します。
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