地震対策といえば、多くの人が「建物の倒壊防止」や「火災の発生抑制」を連想します。しかし、近年の都市型震災において、ビルオーナーや工場経営者を最も苦しめているのは、実は建物内部の**「水損被害」**です。
地震の揺れによって天井裏を通る消火配管やスプリンクラー配管が破断すると、猛烈な勢いで水が噴き出します。火災が起きていないにもかかわらず、高価な精密機器、サーバー、重要な書類、そして内装材がすべて水浸しになり、事業停止に追い込まれるケースが後を絶ちません。本記事では、地震時の水損リスクの正体と、それを防ぐための「設備耐震」の急所を解説します。
なぜ地震で「消火配管」は折れるのか?
消火配管は、通常時は高い水圧を維持したまま建物全体に張り巡らされています。地震時に破断が起きる主な原因は、建物と配管の「揺れ方のズレ」にあります。
1. 剛性の高い配管と柔軟な建物の衝突
鉄骨造の建物などは地震時にしなやかに揺れますが、鋼鉄製の消火配管は非常に硬く(剛性が高く)、建物の揺れに追従できません。
- リスク: 建物の柱や梁が大きく動く一方で、配管がその場に留まろうとすることで、接合部やエルボ(曲がり角)に過度な力が集中し、ポッキリと折れてしまいます。
2. 吊りボルトの破断と落下
天井裏で配管を支えている「吊りボルト」が地震の横揺れで激しく振られ、金属疲労や過負荷で破断します。
- 二次被害: 数百キロの重量がある配管が落下すれば、その衝撃で下のスプリンクラーヘッドが破損し、大量の放水が始まります。
水損被害が「火災」より厄介な理由
火災は火元を特定して消火すれば止まりますが、地震による配管破断は「どこで漏れているか」の特定が困難です。
- 階下への浸水: 上層階で配管が破断すると、水は床を伝って下層階へと広がります。一つの配管トラブルが建物全体の資産価値を毀損させる「連鎖的な被害」を招きます。
- 復旧コストの増大: 水に濡れた電子機器は、外見上乾いていても内部腐食が進むため、多くの場合、全交換を余儀なくされます。内装材の乾燥やカビ対策も含めると、修繕費用は天文学的な数字に達することがあります。
水損を防ぐための「3つの設備耐震戦略」
配管を「ガチガチに固める」のではなく、「揺れを逃がす」設計が重要です。
A. フレキシブルジョイントの導入
建物のエキスパンションジョイント(繋ぎ目)や、配管の分岐点に、伸縮自在な「フレキシブルジョイント」を設置します。
- 効果: 建物の変形に合わせて配管が柔軟に曲がるため、破断を防ぐことができます。
B. 耐震振れ止め(四方位振れ止め)の増設
配管の横揺れを抑えるために、縦・横方向から斜めに支える「耐震振れ止め」を適切な間隔で設置します。
- ポイント: 吊りボルトにかかる負担を分散させ、配管全体の脱落を防止します。
C. スプリンクラーヘッドの保護
天井材が地震で激しく揺れた際に、スプリンクラーのヘッドと天井材が衝突して水が噴き出すのを防ぐため、クリアランス(隙間)を確保するか、フレキシブルな枝管を採用します。
貴社のオフィスビルやデータセンターにおいて、「天井裏の配管がどう固定されているか把握できていない」「水損被害に対するBCP対策が未着手である」という懸念はございませんか? 建物の構造診断と合わせ、設備系の水損リスクを徹底調査し、最適な補強案を提示する**「設備特化型耐震診断」を知りたい方は、無料で3分で完了する「耐震ウェブ診断」をご利用**ください。
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管理者が今すぐチェックすべき「設備点検項目」
- 配管支持部のサビ・腐食: 長年の結露で吊りボルトが錆びていると、地震時の強度は激減します。
- 耐震振れ止めの有無: 古い建物では、配管が単に吊られているだけで、横揺れ対策がなされていないケースが非常に多いです。
- ポンプ室・受水槽の固定状況: 配管だけでなく、水源となるタンク自体が地震で動いて配管を引きちぎってしまう事例も多発しています。
建物が残っても、中身が全滅しては意味がない
「構造」が建物の骨組みを守るものなら、「設備耐震」は建物の神経と内臓を守るものです。特に高度な情報インフラを抱える現代のビルにとって、消火配管の破断による水損は、地震直後の事業復旧を阻む最大の障壁となります。
建物の診断とセットで、天井裏の「水の道」の安全性を確認すること。 この一段踏み込んだ対策が、被災後の事業継続(BCP)の成否を分け、貴社の重要な資産を「見えない津波」から守り抜く唯一の手段です。
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