耐震補強への意識が高まるものの、工場などの対策が後手に回っている会社も。
日本の企業経営者にとって、常に意識を向けなければいけない重要事項の一つが<地震発生のリスク>です。
1995年に阪神淡路大震災、2011年には東日本大震災、そして2016年には熊本地震が発生し、日本列島に大きな爪痕を残しました。
その脅威を目の当たりにし、新たにBCP(事業継続計画)策定に乗り出す企業が急増。地震対策に本腰を入れる企業は増え続けています。
いつ発生するのか分からない地震発生を常に意識し、巨大地震を想定した万全の備えをしていく。今や地震対策は、企業が永続していくための必須事項だという認識が広がっているのです。
近年、日本国内の建築物の耐震化率は上昇を続けています。
一般の住宅においても、助成金などの後押しを受ける形で、耐震リフォームに取り組む人が増えています。
その一方で、依然として耐震基準に満たない建物も数多く存在しているのが実情です。
ものづくりの根幹を担うはずの工場が、十分な耐震補強がなされないまま放置されているといった状況も少なくないようです。
中小企業にとって、耐震補強のコストは大きな負担になるのも事実です。
ただ、耐震補強のメリットを考えれば、ずっと先送りにすることはかえってマイナスだと言えます。
工場=シェルターにすることで、会社の大切な人的資産である社員の命を守る。
耐震補強を十分に施すことで、巨大地震が発生した後も、比較的短期間で復旧でき、操業を再開することが可能になります。
東日本大震災においても、工場に壊滅的な被害が発生し、操業再開までに長い時間を要した企業が数多くありました。
操業がストップする時間が長くなればなるほど、売上に大きな影響を及ぼし、経営に致命的な打撃を与えることになりかねません。
事前にきちんと耐震補強を施しておけば、地震発生時の売上低減のリスクを最小限に抑えることができます。
さらに、早期に復旧が可能となれば、取引企業からの信頼獲得にも大きく寄与することになるはずです。
もう一つの大きなメリットが、従業員の命を守るシェルターとしての機能を果たすことです。
十分な耐震補強がなされていれば、大規模な建物倒壊を防ぎ、地震の危険から従業員の命を守ることができます。
建屋の耐震補強と同時に、機械設備やタンク、製品棚についても地震対策を施しておけば万全です。
建物や機械設備は修復が可能かもしれませんが、従業員という大切な人的資産を失う損害は、単なる数字では計り知れないものがあります。
また、従業員に安心して働ける環境を提供することで、モチベーションの向上にも効果をもたらずはずです。
首都直下型地震や南海トラフ地震の発生が予想されています。安定的に経営を持続させていくために、もしもの地震に備える工場の耐震補強は、早期に取り組んでおくのが賢明だと言えるでしょう。